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株式会社エマーテック(兵庫県神戸市)

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株式会社エマーテック
(兵庫県神戸市)

【写真】長井さん 株式会社エマーテックは1989年(平成元年)設立。各種情報処理システム設計・開発・運用・保守などを行っている。
社員数は約40名(2023年1月現在)。
今回は、代表取締役の長井克暢さん、統括部部長の杉谷志穂さん、チームリーダの佐藤恵さんの3人からお話を伺った。

社員同士のコミュニケーションを円滑にするため、チームごとの食事会を開催するなど、自然と話ができる機会を意識的につくっている

まず、コミュニケーションの促進に関して、長井さんを中心にお話を伺った。

「当社の業務は、設備投資はあまり必要がないのですが、人がいないと仕事がまわりません。私たちがつくりあげたシステムを使用し活用するのは”人”ですので、『人が中心の考え方』を大事にしており、社員が心身共に健全な状態で、頭を回転させて気持ちよく仕事ができるようにするにはどうしたらいいのかを常に考えています。社員同士はもちろん、顧客とも積極的にコミュニケーションをとり、そこから得た情報と私たちの最先端の技術を融合することによって、独自のシステム提案や開発ができるものと考え、活動しています。」

「会社設立当初は、社員同士のコミュニケーションを円滑にするという考えのもと、昼食は社員全員で食べに行っていました。その時は人数が少なかったこともあり、昼時間になったら自然と皆で行くようになっていました。そこで、たわいもない雑談をすることで、仲間意識が芽生え、社員皆で一緒にやっていこうという気持ちが生まれてきた感じがしています。」

「今でも、全社員に声をかけて一緒に昼食に行きたい気持ちはあるのですが、現在の社員数ではさすがに難しいので、近年は、会社全体で食事会イベントを年3回程度(新人歓迎会、忘年会、決算慰労会)開催しています。ホテルの宴会場など、非日常的な高級感を得られるような場所で行うようにしていて、社員からも喜ばれています。2020年と2021年はコロナ禍で開催できなかったのですが、2022年8月に久しぶりに開催することができました。その時は、会話を盛り上げるのが上手な人を各テーブルに1人ずつ配置し、他の社員はくじ引きで座るようにし、チームをまたいだ交流の場になりました。」


食事会イベント(2019年)

「2021年には、部署(チーム)ごとの食事会を実施しました。会社から食事補助代を一定額支給し、その使い方はチームに任せたところ、複数回の昼食に使うチームもあれば、日頃行くことができない高級焼肉店の夕食1回で使い切るチーム、いつもより豪華なお弁当を買って会議室で一緒に食べるチームもありました。感染予防のための在宅勤務を推奨しているので、日頃は1人で作業という社員もいますが、久しぶりに皆とじっくり話ができて楽しかったと聞くと嬉しいですね。このような食事会が、社員間でのさらなるコミュニケーション促進の役割を果たしてくれていると思います。」

「また、 “社員全員が元気に長く働ける職場”を目指して、2019年に健康宣言を制定しました。コミュニケーション促進策のほか、ノー残業デーの実施、毎日15時のラジオ体操の実施、インフルエンザ予防接種費用全額負担、ストレッチなどの健康講座、休憩室の新設など、社員の健康・幸せのため、働き方や健康に関する様々な取り組みを実施しています。また、新型コロナウイルスの感染拡大が始まったころ、在宅勤務対応をいち早く進めました。2020年には“健康経営優良法人(中小規模法人部門)”の認定を受け、今まで3年連続で認定されています。このような活動を通じて、社員の健康に対する意識も少しずつ高まってきたと感じています。その一つとして、社内の飲料自動販売機の利用が、糖質の多いジュースなどから水やお茶に変化してきました。」


事務所内での健康講座(2019年) 


休憩室の新設

産業保健総合支援センターの保健師の支援のもと、「治療と仕事の両立支援」を学び実践したことで、メンタルヘルス不調だけではなく、他の身体疾患への対応も行えるようになっている

次に、治療と仕事の両立支援に取り組んだきっかけと取組内容について、杉谷さん、佐藤さんを中心にお話を伺った。


厚生労働省パンフレット「事業場における治療と仕事の両立支援」
「2019年11月に、名古屋事務所の社員が脳梗塞で倒れたことがありました。私的な音楽発表会で熱唱中に舞台上で倒れたのですが、処置が早かったこともあり、1週間の入院後退院することができ、目立った後遺症もありませんでした。そのため、本人は『明日からでも仕事ができます』と言ってくれたのですが、会社側としては脳梗塞から回復した社員を復帰させるのは初めての経験でしたので、どのように受け入れ、どのように支援していけばよいのか全く分からない状態でした。インターネットで調べたところ、兵庫産業保健総合支援センターに治療と仕事の両立支援の窓口があることを知り、早速相談してみました。すると、両立支援担当の保健師から、パンフレットなど資料一式をもとに、詳細に説明していただくことができました。」

「まず、治療と仕事の両立支援においては、“会社”と“本人”と“主治医”の三者で確認しながら進めることが基本だということを教わりました。パンフレットにある様式に沿って、本人の勤務状況や業務内容を説明した上で、現時点でこのような仕事をさせても大丈夫かを主治医に確認しました。そして、主治医の許可と本人の復帰への意向が確認できましたので、2020年1月から職場復帰することになりました。」

「当社は頭を使う仕事ですので、脳疲労などを会社としてどこまで気をつけなければならないのか分からなかったのですが、そのあたりを保健師に相談しました。そして、通勤時間を配慮して日中の暖かい時間に働けるようにすることや、長時間働き続けるのではなく休憩時間をこまめにとること、重たい荷物を持たせないこと、大声は脳の負担につながるため趣味の歌唱は当分控えることなどの助言を得て、主治医にも内容を確認した上で、保健師からの配慮事項であることを本人に伝えたところ納得してもらえました。」

「本人は業務の都合で名古屋に一人暮らしをしていたので、神戸本社にいる私たちは心配だったのですが、上司が近くに住んでおり、勤務中だけではなく日頃からとても気にかけてくれていました。上司の抱える不安なことへの相談対応は私たちの方で行っていました。私たちも定期的に名古屋に行くなどして、病気と仕事の両立支援プランも毎月確認・更新しながら進めていきました。最後の方は、主治医の確認もしながら、本人の希望に沿って、残業可能時間の制限を緩和するところまでたどりつきました。」

「その後、別の社員がうつ病で休業することがありました。その時も、兵庫産業保健総合支援センターの保健師に確認し、職場復帰に向けて支援を進めていきました。以前の経験を踏まえて、“会社”と“本人”と“主治医”の三者で確認をしながら、職場復帰支援プランを作成しました。職場復帰にあたっては、まず、本人に生活リズム表をつけてもらうことにしました。生活リズムを戻すことが大事なことも両立支援のパンフレットで学びました。そして、最初は、出社するだけの練習からはじめました。朝きちんと起きて、短い距離でしたが電車に乗って出社すること自体もハードルがあることを知りました。その後、半日社内で仕事はせず読書などをして過ごす期間を設け、多くの同僚がいる社内で過ごすことに慣れてもらうようにしました。」

「2ヶ月様子をみて働けそうだという状態になったところで、午前中の勤務、午後3時までの勤務、通常の午後6時までの勤務と少しずつ時間を延ばしていきました。会社内での仕事が一通りできるようになった後、元の業務委託先での仕事にもどることができました。」

「これからも社員が長く働くことができるように、健康経営の活動を邁進すると共に、心身の病気になった際には“病気と仕事の両立支援”をしっかりと行っていきたいと考えています。」

【ポイント】

  • ①社員同士のコミュニケーションを円滑にするため、チームごとの食事会を開催するなど、自然と話ができる機会を意識的につくっている。
  • ②産業保健総合支援センターの保健師の支援のもと、「病気と仕事の両立支援」を学び実践したことで、メンタルヘルス不調だけではなく、他の身体疾患への対応も行えるようになっている。
  • ③治療と仕事の両立支援においては、“会社”と“本人”と“主治医”の三者で確認しながら進めることが大事である。

【取材協力】株式会社エマーテック
(2023年3月掲載)